大判例

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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)2112号 判決

原告 小倉憲太郎

被告 丹治清四郎

一、主  文

被告は、原告に対し東京都新宿区諏訪町七十四番地家屋番号一一〇番木造瓦葺二階建一、棟建坪十四坪五合二階十四坪三合三勺、同上附属鉄筋コンクリート造倉庫一戸建坪一坪五合を明け渡し、かつ、昭和二十七年三月十七日以降みぎ明渡ずみに至るまで一カ月金三千円の割の金員を支払え。

被告は、原告に対し、みぎ同番地所在木造トタン葺平家一戸建五坪を収去し、その敷地を明け渡せ。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

みぎ判決中、第一項の金員支払の部分についてのみ仮りに執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文第一項中金員支払の点を除くその余の部分、同第二、三項各同旨並びにみぎ第一項中金員支払部分について被告は原告に対し昭和二十七年三月十七日以降その明渡ずみに至るまで一ケ月金四千円の割の金員を支払えとの判決を求め、請求原因としてつぎの通り述べた。

「東京都新宿区諏訪町七十四番地家屋番号一一〇番木造瓦葺二階建一棟建坪十四坪五合外二階十四坪三合三勺、同上附属鉄筋コンクリート造倉庫一戸建坪一坪五合並びにその敷地三十五坪は原告の所有するところである。原告は、昭和十九年三月みぎ建物を被告の住家として賃料一ケ月金百円毎月末払い期限の定めなく賃貸しその後、みぎ賃料は何度も改訂せられて昭和二十七年二月以降は一ケ月金三千円とし、かつ、これに毎月修理費に当てるための金千円を加えて被告は原告に金四千円を支払う約定であつた。

しかるところ、被告は、昭和二十七年二月十一日頃、前示建物の敷地三十五坪中みぎ建物の北側六坪上に、原告に無断で、木造トタン葺平家店舗建坪五坪の建築に着工し、原告からの申入を容れてみぎ工事の中止を確約したのであるが、その後、同年三月四日頃再びほしいままにみぎ工事を再開した。

原告は、それで直ちにその違約を責め工事の中止を求めたが、被告はその完成を期して工事をおしすすめるので、原告は、同年三月十三日被告に対し内容証明郵便で工事の中止を通告し、かつ、同催告書到達後三日以内に前記工作物を撤去し原状に回復することを求め、もしみぎ期間内にこれが要求に応じないときは前述の建物賃貸借契約を解除する旨申し入れ、同催告書は同月十四日被告に到達したが、被告はみぎ催告期間中に工事を中止してこれを撤去するに至らず、みぎ期間満了とともに前述の賃貸借契約は解除されたものである。

したがつて、被告は、みぎ解除にもとずいて前述の賃貸家屋の明渡と前示賃貸借契約解除後明渡ずみに至るまでの前述の賃料相当の一ケ月金四千円の割による損害金の支払並びに前述の敷地所有権にもとずく新築の店舗一棟の収去を求めるため本訴に及んだと述べ、かつ、被告主張の抗弁事実を否認し、仮りに、被告主張の如く前述の新築中の店舗敷地について被告に使用貸借契約にもとずく使用権があるとすれば、原告はその解除の意思表示を予備的になずと。」<立証省略>

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、原告主張の請求原因に対する答弁として次の通り述べた。

「原告主張の建物並びにその敷地について原告が所有権を有すること、同建物について原告主張通りの賃貸借契約が原被告間に存在すること原告主張通り原告から着工後工事中止原状回復の申入があり、かつ、停止条件附契約解除の意思表示が原告主張の頃被告に到達したこと、原告主張通りの店舗新築をおしすすめこれを使用に支障のない程度に完工せしめたことは認める。その余は否認する。

みぎ店舗敷地部分には以前湯殿物置等があつて、これらは被告において原告の承諾を得て戦時中建築所有したものである。その敷地部分は恰度新宿区戸塚二丁目ロータリーに面しているので店先を出すのに好適であることから原告の承諾なく工事をすすめ前述の通りこれを殆んど完工せしめた。そしてみぎ敷地の利用については当時原被告間にその利用目的期間その他について特別の定めのない使用貸借契約が成立していたものである。

なお、前述の店舗は将来原被告間の建物賃貸借契約解消の場合においては、いつにても直ちに取り払いのできる様に簡単な構造にして、その時は旧態に復してこれが明渡をなす積りであつた。のみならず、被告は、賃料の支払等一度も怠つたことなく、善良な賃借人として終始しており、また、みぎの店舗の新築によつて原告としては何等の損害がないのに拘らず、あえてこれを理由として前述の賃貸借契約解除をなすことは明かに権利の濫用であると。」<立証省略>

三、理  由

東京都新宿区諏訪町七十四番地家屋番号一一〇番木造瓦葺二階建一棟建坪十四坪五合外二階十四坪三合三勺、同上附属鉄筋コンクリート造倉庫一戸建坪一坪五合が原告の所有に属し、原告は昭和十九年三月以降被告に対し通常の住居として賃料昭和二十七年二月以降一ケ月金三千円毎月末日払期限の定めなく賃貸し、また、修理費に当てるため毎月金千円をみぎ賃料に加えて支払の約定であつたことは当事者間に争いがない。

しかるところ、被告は、昭和二十七年二月十一日頃から、みぎ建物の敷地三十五坪中その北側五坪の土地が新宿区戸塚二丁目ロータリーの公道に面し、店先を出すのに好適のところから、そこに原告主張の店舗の新築に着工し、これを殆んど完工せしめたこと、しかも、その土地の利用や前示新築については原告の承諾がなかつた旨自陳し、それに対し、原告が再三工事の中止と敷地の復旧を求め、さらに、昭和二十七年三月十三日被告に対し内容証明郵便で工事取止敷地の復旧を要求して、同書面到達後三日以内にこれをなすべくもし、これに応じないときは、前示賃貸借契約を解除する旨の停止条件附契約解除の意思表示をなし、同書面が同月十四日被告に到達したことも当事者間に争がないところである。そして、みぎ新築店舗の敷地について被告が利用の権限を有しないことは後記認定の通りであるから、みぎ解除の効果を考察するに、前認定の通り通常の住居として建物を賃借した者がその建物敷地をほしいままに利用して、そこに店舗用建物を新築することは明らかにみぎ建物賃貸借契約の内容に背致するものとすべきであるから、有効な解除があつたものと判定するを相当とする。

したがつて、被告は、原告に対してみぎ賃借建物を明け渡し、かつ前示解除によりその賃貸借契約が解消した日の翌日である昭和二十七年三月十七日以降明渡ずみに至るまでの損害金として前示賃料相当額一ケ月金三千円の割合でこれを支払うべきものとし、原告の損害金の請求をその限度で認容し、その余の損害金請求を棄却すべきものとする。

また、被告は前示新築店舗の敷地を原告から使用貸借している旨抗弁するも、原告は被告に対し予備的にこれが解除の意思表示を主張しているから、その使用貸借契約の成否にかかわらずみぎ抗弁を認容しがたく、みぎ敷地が原告の所有に属することは当事者間に争いがないから、これが所有権にもとずく前示店舗の収去の請求もこれを正当として認容し、被告はこれを収去してその敷地を原告に明け渡すべきものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し、仮執行の宣言は同法第百九十六条により主文中金員支払を命ずる部分についてのみこれをなし、その余の分についてはこれをなさざるものとして主文の通り判決する。

(裁判官 西岡悌次)

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